人類みな兄弟なら僕は末っ子でお願いします

考えたこと、真面目なことから学校に入ってきた不審者をやっつける妄想をするくらい暇な時に読むものまで

オモテサンドビヨーシとの戦闘

青山学院大学、日本の学校の中で1番オシャレな大学と言っても過言ではないだろう。

僕は、そこに通ってもうすぐ4年になろうとしている。本当に美男美女が多いので、僕も多少なりとも身なりに気を遣い、顔の作りの違いに脅かされながらも日々奮闘している。今でこそ青学生らしく見える(そう思いたい、思わせてくれ)僕だが、上京当初はヤバかった。

 

イモの中の男爵イモな僕は、華やかな都会の大学生活に憧れを持ち、青学に進学するために、クソ田舎岐阜から大都会TOKYOに上京してきた。青学では服や身だしなみに気をつけないと潰されると知っており、中でも髪型は、手軽に変えられるため最重要だと思っていた。


入学して間もない頃、東京住みになったことでイキってた僕は、ロクにセットの仕方もしらなかったのに、ワックスを飛び越えてヘアスプレーに手を出した。そんなことをして自然になるわけがない。頭から2mmくらい離してスプレーを塗りつけた僕の髪は、ニス塗り立ての家具くらい光っていた。その固まり具合は抜けた髪でダンボールくらいなら穴を開けれたんじゃないかな。

髪の毛針ッ!!

そして何を勘違いしたのか、「今の僕ならオモテサンドのビヨーインがお似合いだな」と思い、岐阜の倍のカット料金に驚きながらも表参道の美容院を予約した。

 

予約日当日、僕は初めての都会のオシャレな美容院に緊張しつつも、いつものテカリ具合で足を進めた。

到着してすぐに担当の人が椅子へと案内してくれた。そしてその美容師さんは「ワックスとかってつけてます?」と質問してきた。今思うと失礼なヤツだ。

僕は自信満々に「少しです!」と答えた。少しなものか、ワックスと間違えてアロンファルファで固めたみたいじゃないか。すると不意に美容師が僕の髪を触ってきた。とことん失礼なヤツである。そしてピクリともしない僕の髪、ピクリともしない美容師の手。時計は刻一刻と時間を刻みつづける。

僕は鏡越しに美容師の顔を見た。イケメンのはずの彼の顔が青ざめている。人間の髪と思って触ったらガンプラだった時の青ざめ方してる。

彼は「あ…ええ…。」としか答えなかった。

不気味な沈黙が5分くらい続いた後、「ワッ、ワワックスはちょっと手につければ大丈夫なんですよ…なんか…こう…揉み込むよぅに…」となぜか申し訳なさそうに忠告してきた。

ここで全てを悟った僕は居たたまれなくなり、「アーソデスヨネワックスムズカシデスヨネー」と来日して3日目のカタコト日本語で答え、そのあと施術中に美容師と会話することはなかった。

簡単なカットだけのはずの1時間がやけに長く感じ吐き気を催しかけてたころ、ようやく施術が終了した。

鏡を見て僕は驚愕した。やはり表参道の美容師は違う。液体ノリを頭にかけられるイジメにあったような髪は、雑誌で見るようなオシャレ黒髪に…。救われた、本気でそう思った。

僕は席を立ちお会計に進むと…あれ?思ったより高い?目を点にした僕を尻目に、美容師さんはお会計の説明を始めた。

「今回はメンズカットシャンプーなので6000円。そこに1000円の指名料がついて…」

…指名料。キャバクラか?ここはキャバクラか?

岐阜では感じたことのないカルチャーシャックでフラフラになりながら店を出て、夜7時には寝てしまった。

するとその夜、「ワックスが流れる川の中を、斬魄刀みたいなハサミを持った美容師に追いかけられる」という夢を見た。

 

………東京って怖えところだな